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西洋式記憶術

西洋においては近代的な合理性を追求する手段として記憶の研究が重ねられてきたそうです。いかに短時間で効率的に、そして膨大な記憶法があみだすことができるかを競うことになり、その精度とボリュームこそが記憶術の全てだと考えるようになったわけです。


その典型的な例が円周率の小数点以下の桁数の暗記です。記憶術を語る上で必ずと言っていいほど引きあいに出されますよね。無限に延々と続く円周率の小数点以下の数字は、最新鋭のコンピューターの情報処理速度を比較する上での有効な指標となっているくらいです。


それを人間の記憶力を測定する指標として活用する理屈は理解できるような気がしますね。それゆえに、よく暗記の桁数の新記録に挑む挑戦が行われているわけですが、実はこれこそが私たちが陥りやすい矛盾があるということなのです。それは「目的と手段の転倒」ということになります。


いわば記録のための記憶術であり、その記憶自体は確かに凄いものですが、実用性から言えばそれは実際日常生活の中で役に立つことはまずありませんね。新記録挑戦などというイベントを誇示する行為自体が目的となり、記憶術を見世物にしている感が否めません。


これらにように西洋人は記憶術を情報処理をするための道具の一つとみなした結果、本来の目的から逸脱し、目的へのプロセス自体が目的化してしまった、ということです。